映画 ファーストラブ 感想

映画 ファーストラブ
ネタバレありの感想です。
初日舞台挨拶中継もみてきました。
舞台挨拶ネタもちょいちょ書いてます。

・感想

感想に至る前置き。
前置き長いです。

水浸しが伏線だったとは。
と言っても別にこの作品被害者が他殺なのか自殺なのか事故なのか、とそういった点はあまり重要でもなくどういった経緯で冒頭の状況(父親の前でリストカット)になったのかが重要な訳でして水浸しの件に対して大きな意味はない(結果的に他殺になっただけで)のですがこの点を気にするべきでした。
と言うのも冒頭で水浸しになっていたのは気が付いたのですよ。

殺人事件の割に出血が少ない、でも地面は濡れてる。これ何か。でも「動機はそちらで見つけて下さい」の発言があったからこれは他殺なのは間違いなく、その他殺に至った経緯を追っていく話である、という固定観念にとらわれてしまったんですね。

その固定観念がなければこの事件は事故であり、その事故に至った経緯について推察しようと思って観れた訳でトイレが水浸しである以上事故である、という結論に達していたかもしれません。
そして事故なら事故で何故事故が起こったのか、という点に着目して観れたのですが…できなかったですね。

さらに言うとタイトルがファーストラブ。
加害者のファーストラブが重要な要素になるかと思っていたのですがそれもそれで重要でなかった。
というより舞台挨拶でも言っていたのですがこのファーストラブ。観た人それぞれの解釈がありますよ、的な発言があったのですがはっきりとした答えがある訳じゃないんですよね。
誰が、誰に対しての初恋なのか。それがどういった経緯で起こりその人物にどういった影響を与えたのか。複雑な(そしてはっきり名言されていない事も多い)人間関係もあり観た人それぞれの解釈に任せられる点も多いと思います。
テーマ的にちょっと勘違いをして観てしまった。

そしてタイトルがもっと直接的に表現されると思っていた。
色々勘違いをしながら観てしまったばかりに見当違いの推察をしてしまった感がありました。
前置き終了。

といった感じで邪推しながら観てしまった訳ですが結構楽しめました。
オチ的には結局事故だった訳ですがその事故に至る経緯がなかなかに複雑、それに加えてまあまあ納得できる加害者(加害者といっていいのかわかりませんが)の心理状態でなるほどな、と思わせる展開でした。

冒頭の主人公へのインタビュー?か何かで親は自分の子育てを精一杯やっている。引きこもりなどがあって場合それは精一杯やっている自分のせいではなく子供に原因がある、と言及していました。
中盤被害者の妻に対する聞き取りでそんな感じに答えてたんですよね。夫は精一杯やっていた、自分もやっているが子供はいう事を聞かない。
自分たちは被害者であると。

実際に劇中に経緯を観ると全くそんな事は言えないわけでして両親ともに事件に至った原因がある。
被告も被告で非がない訳ではないのですが…あれだけ壊れた人間関係の中で正常な判断が出来る大人になれるとは思えませんしね。

しかし事件が起こり、裁判の過程を通して自身の過去に向き合った。
結果として壊れてしまった心は徐々に改善方向に向かっていく、と言ったある意味救いのある展開だったと思います。
単なる娘による父親の殺人事件、ではなくその事件を通した主要人物の救済の話、と考えるとなかなか良い作品だったのではないかなと思っています。

以下雑記

・真壁由紀

感想では延々と聖山環菜について書いてしまいましたがこっちが主人公だった。
ところであの車で写真を見せられたシーン。あれは父親がわざと見せたんですよね。どういった理由だったかはよくわからないですが。

成人式の日に車ぐらい出してくれればいいのに、と言っていた事から普段から車は使っている。助手席に乗るのは母親の可能性が高い。その母親があの写真に気が付かないわけもないのであれはわざわざ見せていた。そもそもあんな分かり易いカード入れないですしね。
覗きに関してもわざわざ除いている事を伝えていた。そういった趣向だったとしか言いようがないですがその気持ちはさっぱりわからない。
わからないついでに母親も母親で買春も黙認。

そしてわざわざ娘の成人式の日に伝えた。車から出て嘔吐している娘の心配すらしていなかった事から完全に作為的ですよね。こっちの神経もよくわからない。
娘に父親を取られる、的な事で母親が娘を敵視する、という事例は聞いた事はわかりますが…まあその辺はよくわからない。
よく娘さん精神科医(臨床心理士?)になれましたね。
と思ってwikiみたら主人公自身もクリニックで診療受けていた、とありました。主人公も主人公で精神的に衰弱してたんですよね。

今回の件を引き受けたのも元カレから指摘されてた通り自身のトラウマの払拭の為もあったようですし。
旦那の個展の父と娘の写真に涙していたのはそういった関係に憧れていたのか。それとも父を慕っていたのか。
主要人物(由紀、迦葉、環菜)それぞれが肉親に対して複雑な思いを抱いているようですが…なかなかそれぞれの思いを理解するのは難しそうです。
あまり関係ないですがこの事件で一番の被害者は朦朧とする状態の主人公を轢きそうに(轢いた?)なったトラック運転手。

・真壁我聞

なにこの精神的イケメン。いや顔もイケメンなのですが。
全て知っていた、そして全て知った上で相手の負担にならないようにその時を待っていた。
色々と男前すぎると思うのですが。
と言ってもメイン人物が複雑な家庭環境、それによって育まれた精神状態を支えられる人物でなければいけなかった故の精神的イケメンであるのではないでしょうか?
ところで自身の原点の写真ですがなかなかの力業ですね。とはいえあれがなければ迦葉はふさぎ込んでいる状態が続いていたと思いますしあれは正解だったんですよね。そしてその”原点”が写真家になる道にも繋がっていたと。
なんかこの人完璧すぎて逆に怖い。いや他のメインの登場人物が精神的に不安定な人ばかりなので逆に安定しすぎていて怖い、というか何か裏がありそう。結局何もなかったんですけどね。

・庵野迦葉

学内でナンパした人との初行為の際にあんな冷静な顔であんな事を言われたらそりゃまあ関係も解消するってもんですよ。
しかし他のメインの人物が父、母揃って狂っていたのにも関わらず迦葉に関しては父親に触れなかったのは何か深い闇があるのではないかと邪推。
母親は5番目?だかの旦那についていって失踪したとか言ってましたが父親に関してはいない、しか言ってないですしね。
まあその辺り出してもストーリー上蛇足になりそうですし母親関連の事だけでいいんですかね?

・聖山那雄人

駄目だ何一つとしてさっぱり理解できない。
娘(実の娘ではないとはいえ)にモデルを強要していた精神状態もわからないしそれによって得られるメリットもわからない。
環菜の母親にも同様の事を強要していた様子(トイレでのリストカットの後、あとたばこか何かの火傷の跡もあった?)。

逆に言えば血縁関係がなかったが故の強要だったのかもしれない。実際の娘だったらモデルはやらせなかったかもしれないしやらせていたかもしれない。
実際問題この人間も家庭環境に色々とあったのかもしれないですね。まああったとしても擁護は一切できないですが。精神状態もさっぱり理解できない。

で、話は完全に変わるというか舞台挨拶ネタになってしまうのですがライダーキックの時に反応して欲しかった。
あの中で唯一実際にライダーキックを食らった人物(鎧武のフィフティーン)だったというのに。
元気ですか!ネタではなくそちらに反応して欲しかった。ライダーキック食らった(そして改心した)人物って滅多にいないんですよ。

・聖山昭菜

演技凄いですね。
本人的には嫌(舞台挨拶で普通の親子関係が良かったと発言)だったようですが序盤の聞き取りのシーン。なかなかあの母親の演技を出来る人物はいないと思います。適任だったんじゃないでしょうか?
しかし超仲の悪い娘が血だらけになって包丁持ってきた時点で即逃げ出さなかったこの母親はそれなりの修羅場をくぐり抜けてきているのではないでしょうか?
もし娘が普段心穏やかで虫も殺さないような性格をしていたとしてもあの状況だったらとりあえず普通は自己防衛はかりますよね。
それはそれとしてこちらも舞台挨拶ネタ。
本編の母親の心境は比較的どうでもいいのですが舞台挨拶で言っていた車幅よりも狭い路地?を突っ切って行こうとしたときの心理が知りたい。

・小泉裕二

結局小学校卒業直後?の子に具体的に何をしたのか。
まあ言える訳もないのですが。時効と言われてもそりゃ言えないですよね。
その辺りのやり取りがもう少しあったと思うのですが省略されていたような感じがあります。
結局裁判に出てますし。何をしたか、それによって起こる不利益は一切ないと確約してからこその裁判での証言だと思いますしその辺は弁護士からフォローされてましたし。
その際に娘がいるから考えが変わった、的な事を言っていたのでやっぱり聖山那雄人については実の娘がいなかった事の影響も大きかったんですかね?

・聖山環菜

この映画だけに限った話ではないのですが芳根京子は演技良いですよね。
累の時も思いましたがこういう精神的に壊れた人物の演技やらせたら若手の中でもトップクラスではないでしょうか?

しかし劇中で色々と非常に怖い演技をしていましたが一番怖かったのがアナウンサー試験失敗した直後。
とりあえず包丁買ったまではまだいい(それでも怖いですが)のですがその後とりえあずで包丁でリストカットした場面。
父親の目の前でやればいい気もしますが(と言っても目の前でやる事自体が目的ではなく自身の犯した失敗からの解放としての手段としてのリストカットなので事前にやっておく必要はあった)とりあえずやってみた、的な感じで切ってそのまま大学に行くのが怖い。
そして劇中の様子を見る限りまあそれぐらいやってもおかしくはないよね、と思わせる行動全般が非常に怖かった。

それでいて独房?での準備運動的な普段やっていると思われるルーティーンをこなしているのも非常に怖い。さらに言えば精神的に動揺している状態で父親に包丁が刺さった時の状況を正確に、事細かに覚えているのも怖い。
でもその怖さ納得できる、そんな不安定な人物を説得力ある形で演じきった芳根京子はやっぱり演技力凄いと思います。

コメント