・感想
個性的なキャラクター、観客を退屈させないようなストーリー展開、さまざまに散りばめられたブラックコメディと全体的にとても良かったです。
この手の騙し合いゲームって見せ方が難しいと思うのですよね。
単に登場人物が騙し合う、だけだとどうしてもストーリー展開が一本調子になってしまう傾向があると思っています。
この映画はストーリー展開が探偵の脚本で進んで行くので割とやりたい放題なんですよね。ドライアイとか途中探偵による脚本で撃たれたりしてますし。密会の際の会話も実際に聞いた訳じゃないので結構やりたい放題、時には恐らく、で翻訳してますからね。
全般的に観客を飽きさせない方向性で進んでいるように作っていると思います。
暴力描写が比較的少ないのも良かったと思います。
まあマフィアのある意味抗争なので脅しや殺傷事件は起こっている訳ですが基本的には全員表の顔があるので暴力沙汰は避けたい。その辺が無いと単にマフィアとマフィアの抗争のアクション映画となってしまいますからね。暴力沙汰は出来る限り避け、出来る限り合法的に(やっている事は非合法極まりないですが)利益を得たい登場人物の思惑が絡み合って面白くなっていると思います。
さらに言えば暴力描写が少ないためトドラーズとかドライアイの襲撃が映えるんですよね。この辺のバランスは非常に良かったと思います。
で、一番個人的に良かったのがキャラが非常に見分けやすい。
個人的に洋画って登場人物がごっちゃになる事多いんですよね。でもこの映画。メイン人物が髭面ばかりですがその髭が個性的、非常に見分けやすい。
映画のポスターとか登場人物の半数が髭ですが全員ちゃんと見分けがつくんですよね。
普通に見分けられる人にとっては別にどうでもいい話だとは思いますが個人的にはこれが一番良かった。
最後の髭は計算通りか分かりませんが全体的に見やすく、飽きさせない工夫が凝らされた非常に良く出来た映画だったと思います。
マフィア絡みという事で一般映画には使いづらい自分好みのブラックコメディ満載という事もあって最近観た洋画の中では一番だった気がします。
…いやよく考えたら最近コロナの関係で邦画しか上映してなかった。それはともかく良い(あまり他人にお勧めは出来ないですが)映画でした。
以下雑記
・デイブ
ゴシップ紙編集長。豚に酷い事をした人。
映画史上でもかなりの上位に入るんじゃないでしょうか?
邦画ならちゃんと「この映画は動物に危害を加えていません」的なテロップがちゃんと入るというのに。あまりにも酷い事を豚にしてしまったと思います。
本人的にはノリノリだったので問題はなさそうな気もします。
しかし麻薬王を強請るには準備が足りなさ過ぎた気もします。まあ実質強請ったのはフレッチャーでこいつはミッキーにコケにされた復讐的な意味合いが大きかったと思いますが相手が悪かった。
・マシュー
ユダヤ人富豪。
ちょっと強欲過ぎたんじゃないかなあと思います。
だからこそ大富豪になれたとは思いますが。
流石に最初に提示された額の半分以下に買収価格を引き下げようとしたのは如何なものか。
一応500億で買い取っても利益は出るはずの案件で、それを200億(恐らく)程度にまで引き下げるというのは。
でも会社の経営者的には200で買い取れるものを500で買い取ったら300の損失が出る、的な考えもあるようである意味間違っていなかったのかもしれませんが相手が悪かった、というかマシュー自体の力(権力、金)が足りていなかったと考えるのが妥当でしょうか?麻薬王の重要拠点の一つを襲って無事でいるだけの力が無かったというか、そもそもそれだけの力があればもう少しスマートなやり方ありそうですしね。
ただ、フレッチャーが金の為に動いてなければ知らぬ存ぜぬで通せたのかもしれませんが。運もちょっとなかったですね。
それはともかく最終的に1ポンドどこの肉を切り取ったのか気になる。(自身が襲った訳ではないとはいえ)妻を襲ったからブツを切り落とす、的な展開かと思ったのですが自分で選ばさせてくれる辺りミッキーは優しいですね。
・コーチ
ボクシングジム経営者。
うまいこと立ち回ったものだと思います。
トドラーズの暴走は完全に予想外だったと思いますしね。襲撃はともかく動画アップロードとか完全にアホの子の集団ですしね。トドラーズ。
しかしそのアホを統率できるだけある意味怖い存在。組織力的な面ではミッキーには勝てないと思いますが実質的な実行部隊としてはこれ以上怖い存在もない。後先考えない(ミッキーやマシューなどがあまり武力行使しないのは後々の事を考えての事だと思われますし)で行動できるってのは防ぎようがないんですよね。
その集団を管理出来ているだけ彼は優秀…いや管理出来ていなかった。とは言え最初のトドラーズの襲撃はともかくその後はうまく立ち回れたんじゃないかと。
ただロシアンマフィアに報復されそうな気もしますが。
・フレッチャー
ゲスな探偵。
2000万ポンドって事は30億程度でしょうか?
流石に強欲過ぎたとは思います。とはいえ麻薬王相手に強請ろうなんて金額云々は置いといて危険性が高すぎるんですよね。数百万でも数十億でも取引を持ち掛けた時点で命がけなので億単位の金を要求するのはあり得る気もしますが。
自分に後ろ盾がない事を知っているが故の(デイブは簡単に切り捨てるでしょうし)保険をかけまくり、さらにはミッキーへの強請が失敗した時用のプランも用意していた辺り優秀だったのは間違いないと思いますがそれ以上にレイが優秀過ぎた。
まあ相手が悪かったですね。
最終的にどうなったのか気になるところですが多分”映せないよ”的な状態になっていたと思うのであまりに気にしない方がいいのかもしれません。
・ドライアイ
中国マフィア。
ちょっと野心が強すぎたのかなと思います。
それなりに武力もあり、権力もある。しかしそれ以上に野心が強すぎた。ジョージ卿に従っていれば死なずには済んだとは思いますが…まあできなかったんでしょうね。白髪が増えたシルバーバックは引退しろとか自身がトップの上り詰めてやる的な意識満々でしたし。
色々失策はあったとは思いますが一番の失策はミッキー夫妻襲撃でしょうかね?他の面々が出来る限り武力行使をしないよう立ち回っているのに対してこいつ自ら襲撃してますからね。特にロザリンドのオフィス襲って無事で済むはずがないのですが。マフィアだけではなく警察関係も絶対動きますし。
襲撃が成功しても失敗しても後々の事を考えれば完全に判断ミスなのですがその辺は若さゆえの過ち、というかそういう性質のキャラなんでしょうね。特に無駄にロザリンドと行為に至ろうとするのは後先何も考えていないと言えるでしょう。
・ミッキー
ロンドン麻薬王。
名前が可愛い。いやよく考えたらあまり可愛くないような気も。
優秀かつ有能なキャラだったと思いますがそれ以上にレイ、さらにはロザリンドが有能だったので想定的に小物に見える。
立ち回り的には非常にうまい事やっているはずなのですが後半ロザリンド絡みで振り回されっぱなしだったので。
結局引退しても穏やかな生活が送れそうにはないですしね。実質的な勝利者はレイだったと思います。
・ロザリンド
ミッキーの妻。
組織のトップとしては一番有能だったのではないかと。
ミッキーの振る舞いも実質ロザリンドから躾けられたようなラストシーンでしたし。
で、彼女のどこが有能だったかと言えば
麻薬王ミッキーを手懐ける
真っ当な会社経営(それだけにミッキーの事業には良い顔をしてませんでしたが。ただ資金的な援助は受けていなかったかもしれませんがミッキーの顧客の一部から彼女の会社への紹介などはあったかも。ごねた客にシャンパン振舞っとけ、的なシーンから相当単価の高い顧客が多いでしょうし)
玩具みたいな銃で2人撃退
等々全般的に有能過ぎるんですよね。個人的にはレイが一番の勝者だとは思ってますが彼女も勝者側。夫は無事(?)取引成立させて500億の現金を得て引退。彼女の会社は安泰。
引退後の夫絡みでトラブルが予想されますがまあその辺も承知の上でミッキーと結婚はしていると思いますし多少のリスクは織り込み済みなんでしょう。
・レイ
ミッキーの右腕。
ミッキーが信頼するのも納得の有能ぶり。
ローラの件で他のやつにやって下さいよ、とミッキーに進言しているシーン、ミッキーが即座にお前じゃなきゃダメだ、的な事を言っていましたがそれも納得の活躍ぶり。
この話。500億争奪戦がメインみたいな事を言われていますが結局のところ大麻の栽培・販売なんて危険度が高すぎて関わっているだけでも命の危険に晒されるんですよね。
最終的にはミッキーの思惑通りに行ったとは思いますがあの後マシューが報復にこないとも限らないですし。ロザリンドが危惧していたように組織を続けるのも危険、手放した後も危険とある意味割の合わない商売。合法化されればまた別の展開にはなってくるとは思いますが運営に関わっているだけで一生命の危険に晒される訳です。
となると今回の件で恐らく一番の功労者でありそれなりの報酬を得たであろうレイが勝者なのではないかと。
ミッキー程顔が知られている訳でもなく基本的には裏方ですからね。
デイブとフレッチャーには恨みを買われていると思いますがデイブは実質無力化(そもそも金にならなければ関わってこないでしょうし)フレッチャーもあの後無事でいるとは思えませんしこちらもこちらで金にならなければ関与してこないと思われます。
全般的に非常に優秀(体力はなさそうですが)かつ比較的安定した余生が送れそうな時点で一番の勝者じゃないかと思います。
でもご家庭の冷蔵庫で遺体を管理するのはどうかと思いますが。まるごと一人入ってたので業務用かもしれませんが食肉と一緒の場所に置くのは衛生上どうかと思います。
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