映画 キャラクター 感想

映画 キャラクター
ネタバレありの感想です。

前置き
基本的に以下の文章で犯人と書いてあったら両角(偽名)の事です。
両角は本名ではないので犯人と書いてしまっていますがわかり辛いです。すみません。素直に両角と書けばよかった。

・感想

唐突なラストだとは思いましたが個人的に好みのオチ。
ラストの法廷。名前や出身地、生年月日には黙秘、というか興味ない様子の犯人がようやく真相を話し始めたと思ったら唐突なED。
と見た直後は思ってしまったのですが考えてみたら唐突でもないんですよね。
「逆にお尋ねします。僕は誰なんだ(誰なんでしょうか?台詞うろ覚え)」
この台詞に今回の事件の真相が全て含まれているというオチ。
要は誰でもない、戸籍もない犯人がダガーという漫画の登場人物になりきって行っていた犯行というだけの話なんですね。
唐突でもなくあれで終わり。それ以上でもそれ以下でもないという話だった訳です。

で、そのラストを踏まえて劇中の台詞を思い返してみるとそれっぽい台詞がちらほらと。
一番決定的なのが居酒屋で言った「僕の為にリアルで芸術的な作品を書いていただいてありがとうございます」ですかね?
冒頭の一番最初の犯行は連続殺人犯の模倣。あの時点ではダガーというキャラは存在していませんでした。
あくまで34年前の事件を元に同様の事件を起こしたかった(犯人曰くファン)だけであり、あの現場を見た山城の中で生まれたキャラがダガーな訳です。
そしてその作品に感銘を受けた犯人が今度はダガーになりきって殺人を犯していった、というのが事件の真相。

だからこそラストの台詞は僕は誰なんでしょう、で締めて全く問題ない訳ですね。犯人自身が何か動機を持ってやった殺人事件ではないのですから。
戸籍もない、生年月日も怪しい犯人は自分が何者であるか求めていたのではないかと思います。今回の一連の殺人事件以外にも自分は何者であるかを求め自身の興味のある事を模倣し続けていたと思われます。

今回は殺人事件だった訳ですが殺人自体が好きなわけではなさそう(二日寝込むぐらい体力を使う、こんな大変な作業あまり割り振らないで欲しい、的な台詞が)ですが…自身の出生(4人家族が幸せの象徴)もあってか4人家族を殺害するという事自体は色々と思うところがあったようです。(4人家族に対する犯人の思いは理解できなかった)
ダガーに惹かれ、ダガーになりたかった、自分が望む自分自身になりたかった為の犯行。
犯人の思いのほとんどはわかりませんでしたが自分が望む「キャラクター」になりきろうとするその姿だけは共感できるものがありました。
サイコパス殺人鬼が幸せな家庭をぶち壊していく胸糞悪い話ですがオチ的には結構好みの映画でした。

以下雑記

・真壁孝太 (中村獅童)

こっちが生き残るとは。
いや刑事どちらかは死ぬかと思ったのですが清田の方が生き残るかと思ったんですよね。ラストの銃撃も清田の役割かと。
でも物語の終了後の展開としては清田が死ぬ方がわかりやすいんですよね。
ラスト病室で清田の似顔絵を書いていた=散々斬りつけられた手は無事=清田を主人公にした元ヤンの刑事の話を書くことはほぼ確定。
真壁が死んでいたら逆に清田主人公の話にはしづらいですからね。
ある意味清田は山城の作品の犠牲となって…いやなんでもないです。

・清田俊介 (小栗旬)

結構衝撃的な死亡シーンでした。
他の殺人事件って凄惨な殺人現場は描写されてますが実際にどうやったかは不明な点が多いのですよね。
それだけに複数回刺された後止めをさされるシーンまで描かれるとは思いませんでしたよ。急な犯人登場も併せてちょっとびっくりしました。
彼の死因は漫画が重大な手掛かりになっているという事を真壁以外にも伝えていなかった事。後半(キャンプ場の時?)現場で漫画読むなって怒られてますからね。周りに周知していなかったはずです。
しかしこれは逆に彼が山城先生のファンだからこそ周囲に伝えなかった可能性が高いんですよね。事件が起こっても先生に漫画を描き続けて欲しいからこそ漫画の事を伝えるのを最小限にしていた(言っても信じてもらえたか疑問、といった理由もあるかもですが)可能性が高そうです。
その辺の配慮ができる辺り取り調べに対して適性がある、といった評価にも繋がっていると思われますが死因にも繋がってしまったというのは悲しいですね。

・山城家族

最初に訪れた時に母親が微妙な話し方だと思ったら結構複雑な家庭環境だったんですね。そりゃ微妙な話し方になりますよ。山城か夏美のどちらの家族かわからなくて混乱してしまいました。
まあこの辺りはラストのミスリード(山城実家の家族を狙わせる(4人家族の描写)→実は山城夫婦狙い)だったと思いますが。

・川瀬夏美 (高畑充希)

まあ子供は双子ですよね。この辺は結構分かり易い展開だったと思います。
しかしこちらも刺されているはずなのに結構元気ですね。
ラストもう一回ぐらいサスペンスシーンがあるかと邪推してしまいました。34年前の殺人犯捕まってないですし。

・34年前の犯人

名前忘れた。
しかしこの人物について完全に勘違いしていました。
50歳で16歳の時に一家4人連続殺人。34年前の事ですね。
漫画のタイトルが34。ダガーも恐らく34歳。つまり今回の犯人の家族を奪ったのはこの犯人なんじゃないか?と完全に見当違いの方向性を予想してしまいました。全く違った。
それはそうと映画冒頭の殺人事件。やけに顔に切り傷が多い、殺した後に引きずって椅子に縛り上げる等々犯人に繋がる手掛かりがあるんじゃないかと思ったのですが…よく考えたら最初の犯行は34年前の犯行の模倣。
つまりこいつが異常な犯行を行ったから犯人が模倣してそれをさらにダガーが行うようになった…という結局のところダガーの異常性はこいつから来てるんですよね。
犯人の残虐性はある意味創られたものですがこいつは純粋な殺人鬼なので一刻も早く捕まって欲しい、というかこの手の話で捕まらないってのは逆に珍しい気もします。

・山城圭吾( 菅田将暉)

基本的にこの話は犯人が如何にしてダガーという「キャラクター」になったかという話だと思うのですがこちらもこちらで最終的に危なかったですね。
最後犯人に自分を殺すように仕向けた際犯人にダガーになりきれ、的な事を言っていましたが自分も危うく漫画の登場人物になってしまうところでした。真壁いなかったら確実に殺してましたからね。
最初の犯行を観た時にダガーというキャラが自分の中に入ってきた、とありましたが今までにない強烈な体験をしてしまった為に自身にもかなりの影響力があったのか、それとも元々そういった気質だったのか。
恐らく事件の影響かなと思います。見たままの人物を描く事は得意、しかし自身にないキャラを創るのは苦手。良くも悪くも自分の見たものに影響されやすい気質なんだと思われます。

・犯人 両角(偽名)Fukase(SEKAI NO OWARI)

感想の欄で家族に対する思いがよくわからない、と書いたのでちょっと考察。
34年前の事件の真相が不明(劇中あったかもしれないですが確認できなかった)なので判断しづらいですね。
違いがあればそこが犯人の元々に性質だとは思うのですが。
個人的には4人家族に対する恨みはそれほどなかったのではないかと思います。
理由として挙げられるのがラスト山城実家での電話のシーン。ダガーは幸せな家族を狙う、自身の都合でキャラを勝手に変えるな、的な台詞があったと思います。
このシーンからダガーとして4人家族を狙って殺しているだけで自分自身としては4人家族に恨みはない。むしろ4人家族が揃ってさえいえれば(生死問わず)幸せ、といった印象を受けます。
34の漫画の最初の殺人事件。4人並べた後ニコニコしながら椅子に座ってその姿を見ているシーンがあったと思います。(多分)
山城はそれを見た訳ではないのですが警察の話から椅子に座っていた事は確定。実際犯人が笑っていたのか不明ですがダガーは笑っていました。
犯人の姿を見た訳ではない山城が想像したシーンな訳ですが実際にあったんじゃないでしょうかね?
他の殺人事件でも4人家族に対して恨みを抱いているシーンはありませんでしたしむしろ好ましいと思っている節さえあった気がします。
ただダガーが殺しているから自分も殺しただけ、な気がします。
自身の特殊な出生が大きく関わっていると思われますが…彼にとっては家族が揃ってさえいればそれで良い、幸せだ、といった考えがあるんじゃないでしょうかね?むしろバラバラになる前に全員一緒に同じ場所に行けて良いね的な発想もあったのかもしれません。
この辺りは裁判途中で終わってしまったので不明ですが…なんとなくそんな気がします。

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