映画 DANCING MARY ダンシング・マリー
ネタバレありの感想です。
今回は辛口感想。
※雑記追記しました(11/5 23:30)
・感想
これが本当のホラー映画ですね。
結局のところ何も努力してこなかった、大きな感動を得られてこなかった主人公が獲得したものは暴力蔓延る桜市で物理的に影響を及ぼす霊たちが見えるようになっただけ。
精神的には成長したのかもしれませんがあの市で長生きできるとは思えません。
なんせ公共の場で暴力団が堂々と武力をちらつかせて脅してくる。
車上荒らしのチンピラが悪びれもせず脅しをかけてくる。
そして市中(かどうかは不明)にうじゃうじゃいる成仏できない、さらには物理的に影響を及ぼしてくる悪霊たち。
警察組織が仕事をしていないと思われる状況で霊が見られるようになったとしてもそれはそれで困難が待ち受けているとしか思えない。
むしろそれが彼の運命だったのか。
彼のするべき事はすぐに暴力と悪霊蔓延るあの街から脱出して自分のやるべき事を見つける事だと思います。
そう、あそこで霊能力に覚醒したの偶然ではなく全て必然だったから。
しかしそれでも逃れられそうにない理不尽な暴力と霊障。これは現在社会を風刺するリアルなホラー映画だった気がします。
といった冗談は置いといて全体的にちょっと中途半端な映画だと思いました。
もうちょっと霊の出るエンターテイメントアクション的な映画だと思って観に行ったのですが…エンターテイメント的な要素が足りないと思います。
霊は確かに出ます。樹海村とかのホラー映画と遜色ないぐらい、いやむしろ多いぐらいの霊は出るのですが特に怖い存在ではない。
欠損などのあるゾンビもいますが少数派。ほとんど幽霊は元気が有り余っている。活気のない主人公よりよほど元気。
霊を主題に扱うのなら霊もそれなりに霊っぽい格好をしていた方が良かったと思います。伝説の刃物まみれのヤクザがそれを担い、その対比として台湾マフィアが生前の姿そのままにしたのかもしれませんが…あれじゃ単なるヤクザのカチコミと大差ないですよね。
で、アクションシーンも素晴らしい出来栄えというほどのものではなく、基本的に主人公は逃げ惑うかボコボコにされるだけ。最終的にジョニーとマリーの件については目標達成できたもののカタルシスは得られない。
ヤクザは何のお咎めや祟り的なものは無かったですしね。
エンターテイメント的にはちょいちょい挟む小ネタは面白かった(主に高所恐怖症のやくざ関係)もののウジウジしている主人公と感情的なヒロイン、そして底抜けにウザいジョニーとメインキャラの印象があまり良くないので…全体的に見れば不快感が強い。
と言った感じでどれも中途半端な作品に感じました。
もうちょっと何かに突き抜けて作ってくれた方が個人的には好みの作品になっていたと思います。
ラストの爆破後のシーン。車上荒らしと同様にヒロイン暴走してヤクザ全滅。そして主人公が霊能力ヤクザになって仁義を全うしていく、ぐらい適当にぶっ飛んでいた方が良かったのではないかなあと思います。
・市役所職員
ラスト、主人公に殴られた?部長を気遣ったのは良いのですがその後主人公がパイプ椅子を持って本格的に暴れだすと全員部長を置いて逃げ出すのはキャラがぶれていなくて良かったと思います。全員口ばっかり。
それはともかく市役所職員である主人公が自分は何も努力してこなかった、的な話をしていたと思うのですがそれなりの規模の市役所職員ってそれなりに倍率高いので全く努力してこなかったと表現するのはどうかと思います。市民からのクレームとか(理不尽なクレームを日課のようにしてくる市民いますし)結構きつい職業だと思いますよ?
ただしあそこの市は心霊スポット満載、地縛霊がうじゃうじゃ、そしてなにより暴力団が闊歩する無法地帯なので市役所職員になりたがる人間も少なそう、つまり簡単になれる可能性はありますが。
・ヤクザ
それなりの規模の都市開発に絡めるだけでもかなり美味しい案件だったと思うのですが全部自分たちで取り仕切る、と言ってしまうのはどうなのかと。暴対法って結構きついらしいですよ(映画・ヤクザと家族しか知らないですが)
そしてそこに事務所を構えるとか言ってしまう辺り時代錯誤も甚だしい。こんな描写が多いのでこの町の治安はどうなっているのか不安になります。自殺者多いですし(恐らく)
ただし角材持って襲い掛かってきた主人公を適当にボコって終わりにしてくれたのは優しいと思います。他のヤクザだったらジョニーコース(恐らく臓器を売られている?)ですよね。多分。
・病室の2人
年齢の割に名前が昭和初期の感じがする。名前忘れましたが。
ところで警察から逃げた際に出てきましたがあれって主人公達以外には見えてないですよね?
見えている主人公達だけがひき逃げ(未遂)して見えていないはずの警察が避けていたのは違和感が。あの霊だけ普通の人間にも見えていたのでしょうか?避けていたので見えてはいたと思うのですが他の霊は全く見えないのにあの2人だけ見えるってのは設定的にどうかなと思います。
・似非?霊媒師
最初の噛ませ犬的な霊媒師は必要だったと思うのですがその後のセクハラ霊媒師とお爺ちゃんズは必要だったのだろうか?
いや必要は必要(普通の霊媒師にはどうしようもない的な描写で)なのですが無駄に描写が長い。特にセクハラ。
・自殺スポット
戦国時代の戦場っぽい場所。ちゃんと供養しましょう。ダンスホール云々よりこちらを早めに解決した方がいいと思います。
死屍累々の砂浜。こちらもちゃんと供養しないと。強めの霊は物理的に干渉出来る世界観のようなので絶対一般市民に影響が出ている。
ビルの屋上。レミングスのように落ちていく自殺者はどうなのかと。どんだけあそこで死んでいる事か。恐らく数人が繰り返し落ちているのだとは思いますが(小説:などらきの首の体育館の幽霊のように行動を繰り返す霊はいるようですし)それにしても多すぎると思います。
他にもあった気がしますが…なんにしても心霊スポットが多すぎる。全部が全部桜市ではないとは思いますが時間的に他の市町の心霊スポットに行っている可能性は低い、つまり全部桜市の可能性があるのですが。
あそこの市の桜の下には死体がゴロゴロしていそう。
・ヤクザ幽霊
義理人情に厚く、堅気に手を出すのを嫌うヤクザ。
という設定のはずなのですが他のヤクザのシマで薬物捌いている部下は助け出す必要性があったのでしょうか?そんなやつを助けたからこそ裏切られ殺されたような気がしないでもない。いや単にあの事件で組内の力関係が変わりそうだった他の幹部、もしくは親分に消されただけだと思いますが。
しかし生前刺された複数の刃物を武器に戦うヤクザ幽霊ってのは面白いアイデアだと思いました。幽霊である必然性、そして複数の武器を所持している理由付けにもなってなにより見た目的に面白い。
敵マフィアもそれなりに戦い方に拘って欲しかったと思いますが。どうせヤクザとマフィアの幽霊が戦うならそれなりにマフィアの見た目にもこだわって欲しかった。
・台湾マフィア
台湾マフィアという設定、そして台湾ロケは必要だったのか疑問に思います。別に他の市町の暴力団(幽霊)との抗争的な絵面でも良かったんじゃないかと。
ただ飛行機に乗るヤクザ幽霊とジョニーは面白かったです。
・浮浪者の霊
物理的に干渉していた(ヒロインが奥に引っ張られていた)事からそこそこ強い霊な気がします。それとも霊は全員物理的に干渉できる設定なのでしょうか?あの市は霊障が絶えないと思うのですが。
それはそうと死体が放置してある廃工場がうじゃうじゃありそうであの市は本当に怖い。
・マリー
ジョニー曰く怒ると超怖いとのことでしたがジョニーが後先考えずに馬鹿な行動しているからだけだと思います。遊び半分で無銭飲食して逃げてればそりゃ普通の人間は怒りますよね。
マリーは恐らく普通の感覚の人間だったと思います。
ただ地縛霊としてはかなり迷惑な存在だったと思いますが。まあマリーが地縛霊になったのはジョニーが悪いのでやっぱり全部ジョニーが悪い。
・ジョニー
彼女との同棲(結婚?)を持ちかけた後ヤクザにイカサマ仕掛けているあたり待ったく後先考えていないバカなのは間違いない。しかも分かり易い部類の。イカサマも数枚カード仕込んでいるだけっぽい=必勝法でもないですしね。
台湾に売られたのは今回の件が無くても時間の問題だったでしょう。
・雪子
いじめ(というか無視?)云々は置いといて自宅で倒れていた理由が気になるのですが何か説明ありましたっけ?ちょっと気になります。
そして車上荒らしに対しては力を使ったにも関わらずヤクザ相手に使わなかった理由がよくわからないのでそこも気になります。
純愛サイキックエンターテイメントとするならばあそこでサイキック女子高生対ヤクザの大立ち回りぐらいやって欲しかったと思います。
・藤本研二
公務員と市職員とスケボーをディスっている気がします。
まあ最初の二つは脚本自体が公務員を見下している感じがあるので置いといてスケボーはディスる理由がよくわからない。序盤に登場した(そして休みの日にやっている程度の話で終了した)だけであとで何も使われなかったですからね。何か意図があったのか気になります。
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