小説 さえづちの眼 感想

小説 さえづちの眼
ネタバレありの感想です。

比嘉姉妹シリーズは読んでいますが記憶が曖昧な部分もあります。
他シリーズのネタバレもあります。

以下ネタバレありの感想です。

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母に

感想


ホラーというよりミステリ要素強め?

今回に限らずミスリードしかけまくりなこのシリーズですが・・・今回は恐怖感よりミステリ感が上回っている印象。

・・・今回は、ではなく今回も、な気がする。

それはともかく今回は尾綱瑛子の正体について劇中でも推測がなされているのですが・・・実はナナコと名乗っていた少女が瑛子でした、というオチ。
で、瑛子と思われていたのが実はタクミ、琢海。
冒頭、そして他の記述から男性っぽく描かれてはいたけれども実は女性で、ナナコ(尾綱瑛子)によって瑛子を演じさせられていた・・・

とそちらのミステリ要素をメインに感じてしまいました。
ホラー要素はあれども・・・それほど怖くはないですね。
シリーズの中で比較すると、ですが。
普通の小説でこういった成り代わりの描写があったらホラー間違いなし。

個人的には誰が誰になっていたのか、という事が気になり過ぎてホラーはあまり気にならなかった、という程度の話です。

それはともかく本編以上に気になったのが比嘉姉妹の母親の登場。
他シリーズでも断片的に語られる家族関係。
今回は母親関連の話という事で語られたのでしょう。

という事は「母に」というタイトルは

瑛子という「母に」になっていた琢海
真琴の「母に」なっていた琢海
そして「母に」抱っこしてほしかった琢海

等々の意味合いがありそうです。もっとありそうですが。

最後の「ねえ、抱っこして」は「ぼぎわんが来る」のラストを彷彿とさせますが琢海が他人に抱きしめてもらいたいと願う「尾綱瑛子」となるのか。
それとも役割ではなく自身の母と、子供と抱きしめ合う関係となるのか。
それはこれからの「母と」の関係が大きく影響してきそうな気がします。

完全に余談ですが「ぜんしゅの跫」の「鏡」
あれは確定した事実ではなくそうなり得る未来もあるよ、というだけの話ですよね。
事実だとしたら・・・あまりにも救いが無さすぎる。
ぼぎわんになる方がいくらかマシにさえ思えるのですが。

尾綱瑛子


今回の怪異の正体?
とはいえこれまでのシリーズ同様はっきりとしない存在ですが・・・

目的は「抱っこしてもらう」事?
その為に家を作り役割を作り、抱っこしてもらうための「お母さん役」を作っていた?
少なくとも「1911年」から存在している?
「天のお告げ」「千里眼」「口寄せ」が使える?
「栄養」を与える事が出来る。「栄養」を遠くに飛ばす事も出来る?
「栄養」で物理的に干渉する事も出来る?
自身の姿は少女のまま変化させる事はできない?
正体がバレそうになると火事を起こし逃走していた?

などなど。
人に役割振ってその中で過ごす、というのは「ししりばの家」ですがあれは霊的ホームセキュリティがミサイルだかなんだかで暴走しただけなのでちょっと違う。
栄養に触れた真琴たちが「快適だから不快」的な事を言っていたので悪意で人間に害をなしている訳ではなさそう。
まあ「役割のない子に役割を与えている」と完全に善意っぽいのがどうしようもないですが。絶対に再度同様の事を繰り返す。

基本的な願いは「抱っこしてほしい」という事なので愛情を貰えなかった特殊体質の少女が怪異と混じってしまった、という事?

まあこれまでのシリーズもはっきりした事がわかった存在ってそうそういない(ぜんしゅ?は判明していたような)ので今回も怪異っぽい存在だと認識しておきます。

台詞


火事のシーンで尾綱瑛子が話していた台詞
抜け落ちていたので保管してみようと思います。あっているかは知らない。

「どうしてじゃまするの」
「いらなくなったこにやくわりをあげていたのに」
「たくみはとくにえいようあげてたからかあさんになってもらったのに」
「なにものだ」
※下2行はあっているかかなり怪しい

鎌田滋


子供が急成長したのは本当に栄養が足りていなかっただけなのでしょうか?
18歳から20歳になるまでに20センチ背が伸びた、とかいう描写があった気がしますが本当に栄養の問題?

違うとなればそれは滋の能力のはず。
尾綱瑛子が他者に栄養を与えられるように滋も同様の能力だった可能性が?
滋は違う能力だと言っていましたが・・・

もしかしたら尾綱瑛子は他者の能力を奪える怪異なのかもしれない。
歴代の尾綱瑛子は能力者の近くに出没していたようですし。
で、今回は滋に近づき能力と家を奪った、と。

もしかしたら記事になっていないだけで無能力者に近づき、抱っこだけして満足していた過去もあるかもしれませんが。


あの日の光は今も

感想

SF・・・かと思いきやミステリー。と思わせておいてホラー?

結果だけをみるとメインの登場人物がほぼ全員死んでいる後味の悪いホラー。
ただしそこまでの過程が丁寧というか伏線をきっちり張ってあるように見えるので納得できない展開ではないと思います。
まあ最後に訳の分からない状況で何もできずメイン人物が死んでいった、というのは納得できない人もいるかと思いますが・・・その辺は好みでしょうね。今回の怪異(神?)は今までの怪異以上に説明がない存在ですし。

ただし今回の話は「ずうのめ人形」を読んでいないと面白くない可能性が。
今回の話のメイン(と個人的に思っているのは)は謎の事件の真相がSFか、それとも怪異か・・・という流れの中、ゆかりが突然事件の真相を”解釈”してみせた事。

証拠は何もない。
人気料理研究家で忙しいゆかりが事件を解決する必要性もない。
そしてそれが合っていたのかさえわからない。

しかしゆかりが知り得た少ない情報から”解釈”した真相は非常に説得力があるものでした。
そしてそれは事実だったと思われます。

「ずうのめ人形」を読んでいると真相に気が付いたゆかりの行動や豹変っぷりの真相がなどがよくわかり、なおかつよくまあ人にそんな事言えるね、お前は、的な感想になって楽しいのですが・・・
読んでないとこの辺の楽しさが半減してしまうような気がします。

まあそれでも楽しさ半減するだけでこの話単体で読んでも面白いミステリでした・・・
いや、でも光の正体や触手を持つ生物は何だったのか、ロッカーから取り出そうとしている手にしては違和感のある表現だなあ・・・と思いながら読んでいくと結局、怪異は存在していた、というオチ。

最終的に親子そろって殺されたのかは謎ですが・・・その辺はさておき。
SFの話?と見せかけて実は人の起こしたミステリと怪異の起こした災いの合わせ技でした、という綺麗なオチでした。

思えば「ぼぎわんが来る」でも良い人そうに見えたお父さんが実は・・・的なミステリ要素が多いシリーズ。
今回の話が面白かったのも納得できる話でした。

・・・まあ中編の話なので若干消化不良感があるのがあれですが。
結局ぬしは何がしたかったのか?

はぎねのぬし

結局こいつはなんだったのか・・・。

本文中で巴杵池の青い光は凶兆、と書かれていましたが・・・本当に単なる池のぬし的存在?

ぬしが確定でやった事言えばラストで主人公と母親を引きずり込んで殺しただけ。

ロッカーの子供の件は偶然の可能性もありますし・・・。本当に何がしたかったのかわからない。

主人公はうるさかったらついやっちゃったぜ、的な展開もあるとは思うのですが・・・信心深い母親もやったのは謎。それまで何十年もこの池に来ていたのに。

池に引きずり込んであとわざわざ発見させるような状況にしていたので・・・単に見せしめ的にやったとか?
自分の存在アピールしてくれてたから色々やってあげたけどもう役にも立ちそうにないから・・・とか?

基本的にこのシリーズの怪異の正体が完全に明かされる事はほぼないですがここまで訳の分からない存在はいなかったような気がします。


2023年6月10日追記
コメントで「はぎねのぬし」は

”辻村ゆかりの能力で“本当にいることになってしまった”怪異ではないでしょうか”

との指摘があった為、辻村ゆかり関連の話を読み返して再度「はぎねのぬし」について考察してみました。

結果、恐らくコメントの通り辻村ゆかりの能力でいる事になってしまった怪異である可能性が高いと思われます。

辻村ゆかり、本名「辻村里穂」は「ずうのめ人形」の怪異(名称不明。人形ではなく人形が呼び寄せる存在)を呼び寄せた人間なんですね。

最終的にはその怪異によって殺されてしまう為、呪いを制御する事はできないのですが、彼女の人間的性質から呪いを呼び寄せる事が出来ます。また彼女の文章を読んだ人間を呪う事が出来ます。
これが「ずうのめ人形」の設定。

次に「などらきの首」の「悲鳴」
この話ではりーたん、という人物が登場します。
明言はされていない(はず)ですが辻村里穂=りーたん、である可能性が高い。
とある事件が起こる訳ですがりーたんが事件を推理する流れがあります。
一応辻褄はあっているのですが犯人の供述が推理と一致しないところもあって・・・おおよそあっているけど彼女の憶測もあったよね、となっていくのですが・・・
徐々に犯人の供述がりーたんの推理道理に変化していってしまう、というオチとなっています。
「悲鳴」では実際の真相はどうだったのか曖昧なまま終わってしまうのですが・・・

「ずうのめ人形」と「悲鳴」の展開を踏まえると辻村ゆかりは呪いを呼び寄せる事が出来る存在であり、彼女の推理によって彼女の望んだ怪異を発生させられる、もしくは引き付けられる能力であると推測できます。

今回の話では辻村ゆかりが恐らく正しく真相を推測した”考察”を披露した後、調子にのって出鱈目をいってしまった、と語っているんですよね。
拾った子供の為に人を殺せる立派な母親なんていなかった、化け物がいてそいつが色々やってくれた、”そっちの方がいい”と。

実際の事件がどうだったのかは不明ですが彼女自身がそう願ってしまったから「はぎぬのぬし」は誕生してしまったのではないでしょうか?

と考えると何故数十年、池に通い詰めていた母親を急に殺害したのか、という謎が解けるんですよね。
彼女が立派な母親なんていなかった、ぬしがいた方がいい、と望んだので。
そういった怪異が呼び寄せられてしまった結果、母親と主人公は犠牲となってしまった、というオチだったと思われます。

・・・結局ミステリーではなくホラーじゃないですか。
というよりミステリー小説が能力者の登場によってホラーに変貌してしまったというか。
しかも探偵役がミステリーをホラーに変えるとか・・・ある意味非常に斬新なお話ですね。
事件を解決(?)に導いた探偵が事件後に被害者を増やすというのは・・・

事件の整理

・冒頭 道子の台詞「あんな罰当たりで可哀そうなことを。それ以前に法に触れることを」

亡くなった本当の昌輝を埋めた事。はぎねのぬしに蘇生してもらおうとしていた?


・巴杵駅で道子とぶつかった女性

主人公をロッカーに捨てた女性。落とし物は主人公が入ったロッカーの鍵。
女性はその後自殺したがその原因にぬしが関係あるかどうかは不明?


・1981年7月 主人公が遭遇した事件

主人公と聡がはぎねのぬしと接触。
ぬしが何をしたかったのかは不明?

「あの日の光は今も」の光の正体ははぎねのぬし。


・1981年 遭遇した事件での主人公の証言
 「二体の巨大な、黒いヒトデのような生き物が現れた」

ロッカーから主人公を取り出そうとした道子たちの手。
その際の記憶はほぼなかったはずだがぬしと遭遇した事件で断片的に思い出してしまった?
(記憶の整合性をとるため?)


・天平才九朗
 「池の畔でエイリアンの死体を掘り当てた、これが動かぬ証拠だ」

池の畔に埋められていた昌輝の遺体。
その後、池で溺死していた原因は不明?
道子がやった、もしくはぬしがやったと思われる。(どちらかは確定してないはず)

・聡の死因

主人公の出生の秘密を暴露しようとして母親と口論。
その後滑って池に落ちたのか、母親に突き落とされたのか、それともぬしに引きずり込まれたのかは不明?

蜜柑投げろキュー!

個人的にはこの話の一番の謎。
元ネタがさっぱりわからない。ググってもわからなかった。
SFマニアしかわからない内輪ネタ?

個人的にはSFで蜜柑投げろと言われると映画「“それ”がいる森」を思い出してしまうのですが時代的に全然違いますよね。そもそもこの話書いていた時にあの映画やっていたかどうかすら不明ですし。

関係ない話ですが「”それ”がいる森」は結構好きです。
怪異の存在が・・・と思わせておいてまさかのあの正体。
病気の作物で”それ”に立ち向かうラストは・・・大爆笑でした。
特にお気に入りのシーンはわざわざ落とし穴掘った後に不用意に近づいて捕食されるシーンですね。あの監督の作品はこの手のシーンが漫才のようにテンポが良すぎて好みです。
映画「事故物件」もラストの物件でテンポよくあれが出てくるシーンで爆笑してました。
ただどの作品もホラーとしてはどうかなと、と思うところが多々ありますが・・・長くなりそうなのでこの辺でやめておきます。

2024年1月5日追記。
コメント欄で情報提供していただきました。

宇宙友好協会の「リンゴ送れ、C」が元ネタではないかとの事。
この元ネタはまったく知らなかったので軽く調べてみましたが・・・

宇宙友好協会はかつて存在したUFO研究団体。
「リンゴ送れ、C」はその協会が使用した会員向けに送られたメッセージのようですね。
内容自体は本筋とは関係なさそうなので省略しますが要は仲間内だけで通用する暗号的なものだと思われます。

本編で「蜜柑投げろキュー!」を使ったのは質の悪いオカルト愛好家たち。
UFO事件に関係した元少年の奥さんに対して揶揄しているかのように使われています。
奥さんから旦那さんに色々言っといてくださいよ、まあでも奥さん旦那さんの事を思って伝えないか(笑)
と、どうみてもバカにしているシーンの直後に「蜜柑投げろキュー!」と爆笑しているんですよね。

リンゴ送れ、C≒蜜柑投げろキュー!だと仮定すると
リンゴは秘密のメッセージを共有しようとしているのに対して蜜柑は秘密を共有しないようにも見え、あまり近い意味合いの言葉には聞こえないですが・・・本文で「蜜柑投げろキュー!」は”UFO愛好家の内輪の冗談”とも書かれているので単にオカルト知らない奥さんをバカにしただけで深い意味合いはないのでしょうね。
要は質の悪いオタクが仲間内だけで通じるワードを使って内輪だけで盛り上がっているシーンって事でいいと思われます。

まあ本編での扱いはともかく・・・
リンゴと蜜柑。送れと投げろ。Cとキューと似たような意味合いのワードが使われているので「蜜柑投げろキュー」の元ネタが「リンゴ送れ、C」である可能性は高そうです。

湯水清志

どこかで読んだような・・・でもなんか思い出せない。重要な人物だったような気がしたのですが・・・と思って読んでいたのですがゆかりとの合わせ技でようやく思い出しました。

「ずうのめ人形」の冒頭で死んでいた湯水さんですね。そりゃ思い出せんわ。重要人物ではありましたが(編集長関連の)本編ではほぼ名前だけの存在でしたし。
ある意味今回が初登場ですね。良い人そうなのでのちのシリーズでも再登場する事を期待しています。

まあ「ずうのめ人形」では今回関わったゆかりによって殺されている訳ですが。
直接やった訳ではないのですが・・・まあ直接やったも同然ですよね。多分
(ずうのめ人形を読んだのが結構前なので詳細忘れてしまっています)

辻村ゆかり

呪いの元凶まさかの再登場。
そしてまさかの探偵役。
周囲の人間が真相に気が付かなかった状況でなぜ彼女が真相に気が付いたのかと言えば・・・母親、というか家族の存在ですよね。

詳細は忘れてしまったので詳しい解説は出来ないのですが彼女の過去の話が今回の話を解決に導いているのは皮肉ですよね。
そんな母親存在するのか?という疑問から事件に真相に気が付いた訳ですし。
ある意味彼女でなければ解決できない問題だった。

ただ解決したからと言って被害が抑えられたかと言えば不明。
ある意味終わった事件を蒸し返しただけ。
主人公の記憶の謎(の一部)が解けたのは良いのですが・・・結局その後死んでますしね。

彼女が探偵役をやらなければ主人公は最後死ななかった可能性すらあります。
さすが呪いの元凶。
自覚ありなしに関わらず人に不幸をまき散らす恐ろしい存在ですね。

湯水には再登場してほしいと思いますがゆかりさんは・・・もう成仏して下さい。

完全に余談ですがシリーズ通して最強の怪異(怪異かどうかすら不明)はずうのめ人形が呼び出す存在だと思っています。

人間に直接物理的被害を及ぼすだけで超凶悪な怪異扱いされるこの世界感の中でビルごと破壊できる存在を呼び寄せられるのは強すぎると思うの。

さえづちの眼

感想

ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム!
を思い出したのは自分だけでしょうか?

それはさておき若干後味の悪いホラーでした。

今までのシリーズ。淀みを持ち、怪異を引き寄せる人間は何人かいたものの自業自得とも思える人間が多かったように思えます。

例えばぼぎわんやずうのめのような。呪いを呼び寄せても仕方ないよね、と言われている人間が呪い、怪異を引き寄せ結果的に悲惨な末路を辿ってしまう。

ただ今回の加害者であり、被害者でもある佳枝はずうのめ人形の辻村ゆかりなどまでの行為は行っていないんですよね。
数十年間たまりにたまった思いはあった。それを相手に向けている事もありましたが・・・

しかし架守家の人間に直接危害を加えた訳ではない。
さえづちにおびえる鈴子を利用した事はありましたが・・・まあこれは鈴子も厳しい姑であった事。嫌がらせをするのが目的ではなく冴子を自由にしてあげたい、という理由があったからです。

危害を加える気が無ければそれでいいのか、と言えば・・・ぼぎわんの被害者の夫はは悪意は全くなかった訳で悪意が無ければいいって話でもないのですが・・・それはおいといて。

よそ者の家政婦から見ても佳枝はやる事はきっちりやっていた。
架守家の関係者も事実を知るまで悪く言う人はなかった。

読者的にも共感するところはあったと思うのですが・・・結果的に佳枝は蛇のように脱皮と死を繰り返す事になってしまった。

さらに架守家もほぼ離散状態。
呪いが佳枝に向かった事で真緒が流産を繰り返す事はなくなったかもしれませんが・・・ほぼ全員不幸な結果に。

なんとも後味の悪い結果となってしまったと思います。
まあホラー作品って基本的にバッドエンドが多いのですが・・それにしても報われなさすぎる。
琴子も気が変わったら連絡して、とか言ってはいましたが・・・連絡しようがない。
なかなか後味の悪い章だったと思います。

・・・よく考えたら後味の良いのってありましたっけ?
一応ししりばとぜんしゅは被害は出たものの完全に解決したような。
ぼぎわんとずうのめは解決したものの後味の悪いバッドエンド。などらきは・・・解決はしてないですね。などらきは・・・などらきが首を取り戻して後は不明?

その辺の詳細は覚えていないですが・・・完全なバッドエンドはこれだけな気がしてきました。
・・・やっぱり後味悪いホラーですね。

家政婦

後半全く出番がなかった?

自分の勘違いでなければ全く出番なかったはず。
他の作品に登場した人物でもないっぽいですし(そもそも1960年代?に年輩の家政婦な時点で他作品には登場しづらいはず)・・・いったい何だったのか。

要はミスリード要員でしょうかね?
怪しい人物だと思わせて・・・実は全くそんな事が無かった的な。
シリーズ読者だと家政婦の手紙自体がミスリードになっていたのかも?

というのもぼぎわんの夫。ずうのめの辻村ゆかりは自分視点で語っていたから悪意に気が付きにくかったんですよね。
夫の方は独りよがりの育児に参加している風。
ゆかりの方は自分の行為を悪意を意図的に省略していた。
文章からはわかり辛いけれども悪意が見え隠れしている。

しかし今回の佳枝はその悪意が非常にわかり辛い。
なにせ家政婦は佳枝をいい人だ、今まであった奥様の中でも一番と言っても良い人、と褒め称えている訳です。そして娘の冴子を思いやった行動は間違いなく本物。
読者からしてみれば佳枝に淀みが集まっているとはわかり辛い訳です。

シリーズ読者ほど騙されて・・・いや初見だろうかなんだろうが佳枝に原因があるとわかった人はいるのだろうか?自分は無理でした。

冴子の子供

で、佳枝が呪われた最大の原因が冴子の子供を殺した事。

思い当たる描写が無いので読み返してみたのですが・・・山蛭?
椿のジャケットについていた山蛭を枝で払い落した、その後踏みつけている見失った、との記述が。

その直後、既に70を超えている佳枝が年の割に元気だ、という描写があるので・・・蛭っぽいですね。
冴子の逆鱗に触れて直後に呪われているっぽい。

で、それが原因だとすると・・・冴子さんそりゃ理不尽ですよ。
蛭からしてみれば・・・親族に挨拶でもしようと這い上がって来たのかもしれませんが佳枝、椿にしたら単なる蛭ですからね。そりゃ払いのけたりしますよ。踏みつぶすかは個人によるとは思いますが・・・。かなり理不尽。

※2023年追記 ググッって知ったのですが子供は山蛭ではなく蛇の幼体(?)だったようです。
幼い蛇は山蛭に似ている種類もあるとのこと。つまり山蛭と見間違えられた蛇が冴子の子供だったようです。納得。

冴子

とは言え冴子はかなり母親に対して感謝していたと思うんですよね。
叔父の事業が成功したのは恐らく冴子の影響があったと思われます。

佳枝は一度ケガをしてから山へ行く事は減っていたと思われますがその間も架守家の事業は問題なかった。家にさえづちが来ることもなかった。良い関係を築けていたとは思うのですが・・・

まあそこは良くも悪くも人ではない存在になってしまった、という事なんでしょうかね?

佳枝と琴子の台詞に
日本の神は善でも悪でもない。恵みを与える事もあれば祟る事もある。
とありました。
祀るとか鎮めるのは要はご機嫌取りだと。

さえづちとなった冴子にとって子供を殺された事は決して許す事の出来ない行為であり、神の機嫌を損ねた架守家は呪われてしまった・・・という事なんでしょうかね?

もしくは佳枝の性質を強く受け継いでしまったから?
佳枝も冴子は子供を殺されたりしたら絶対に許しはしないだろう、と思っていた場面があります。
佳枝はそういった冴子の性格を知っていたんでしょうね。親ですし。
人間の身でありながら何十年も恨み続ける佳枝。娘である冴子も似たようなところがあったのかもしれません。
冴子の詳しい描写は少ないので不明ですが・・・冴子と佳枝が結託して自由になった件を考えると似た者同士なのかもしれません。

・・・いや佳枝はさえづちという存在があるとは信じていなかった。利用しただけ。
逆に冴子はさえづちを知っていた。それどころか一緒になりたいと願っていた。
もしかしたら冴子は佳枝以上の気質の持ち主だった可能性もありそうですね・・・。

コメント

  1. 舟木裕次郎 より:

    「はぎねのぬし」の正体ですが、辻村ゆかりの能力で“本当にいることになってしまった”怪異ではないでしょうか。ことの顛末を語り終えたあとに彼女が「そっちの方がいい」(p.216)と望んだことが生まれたきっかけで、それ以前は存在していなかったのだと思います。

    • sika34567@gmail.com より:

      コメントありがとうございます。
      なるほど。その可能性が高いですね。
      「ずうのめの人形」や「などらきの首」の「悲鳴」で辻村ゆかりがやった事を考えるとゆかりが望んだ事で生まれた、もしくは引き寄せた怪異である可能性は非常に高そうです。

      差し支えなければこのコメント欄の事を本文に追記させてもらいます。

  2. 舟木裕次郎 より:

    お返事ありがとうございます。問題ございませんので、お任せいたします。

    (別件ですが、「尾綱瑛子は他者の能力を奪える怪異」というの、自分では全く思い至らなかったのですが、この記事を読んだ後に「母へ」を再読してみると確かにそうだ! となりました。たいへん勉強になりました……!)

    • sika34567@gmail.com より:

      ありがとうございます。
      辻村ゆかりが出ている他のシリーズを再度読んでから追記してみます。

      このシリーズ、怪異について明言されていない事が多いので読んでいても気が付かない事が多いですよね。
      こちらこそ勉強になりました。ありがとうございます。

      • 春日 より:

        初めまして、感想がっつり書かれていてとても楽しく読みました!
        蜜柑投げろキュー!はリンゴ送れCのパロディかなと思うのですがいかがでしょう

        • sika34567@gmail.com より:

          コメントありがとうございます。
          リンゴ送れCという用語があるんですね。
          リンゴとミカン。CとQで関連性はありそうですね。
          情報提供ありがとうございます。

        • sika34567@gmail.com より:

          本文のコメント欄の情報を追記させていただきました。
          情報提供ありがとうございます。

  3. たけ より:

    ずっと文中で「ずうのめの人形」となっていますが、正しくは「ずうのめ人形」です。
    他記事でもそうなっている箇所がありました。

    • sika34567@gmail.com より:

      すみません。完全に勘違いをしていました。
      「ずうのめの人形」を「ずうのめ人形」に修正しました。
      ご指摘ありがとうございました。