小説 ばくうどの悪夢 感想

小説 ばくうどの悪夢
ネタバレありの感想です。

比嘉姉妹シリーズは読んでいますが記憶が曖昧な部分もあります。
他シリーズのネタバレもあります。

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ネタバレ 少なめの感想

ネタバレすくなめ感想。

全体的にグロイ。
シリーズ屈指のグロさ。

今回は夢に関する怪異がメインの為か、かなり痛々しい描写がずらり。

今までのシリーズの怪異は精神的に迫ってくるものが多かった為か物理的な痛みに描写が薄目だったと思います。
そもそもこの世界の怪異は物理的に被害を与えてくる時点でかなり高位の怪異。
物理的に強い怪異はそれほど多くはない。
物理的な破壊力ではずうのめのあれが最強だと思われますが(ビルを丸ごと破壊出来るぐらい)それ以外ではせいぜい人を食うぐらい。
その人に危害を加える描写自体は生々しいものが多いのですが・・・今回は今まで自重(?)してきた反動か生々しいに加えて痛々しいものが非常に多い。

悪夢から覚醒するために。
悪夢に陥らないために。

自重しない自傷行為が連発。非常に痛々しい。

後半はその描写が減ってはくるのですが・・・前半はシリーズ屈指のグロさと言ってもいいと思います。
逆に後半はそのあたりの描写は減ってはくるのですが・・・かわりに読者への精神ダメージが半端ない。
個人的には琴子の家族に関するシーン。
今までのシリーズでは基本的に無敵(ししりば除く)の琴子ですが今シリーズでは・・・かなり切ない描写が。

ラストの展開含めて比嘉姉妹未経験者にはお勧めできない、しかし比嘉姉妹シリーズを読んできたファンにはお勧めできる一冊だと思います。

・・・まあ夢の話が云々って話をしましたが一番グロイのは夢あまり関係ない冒頭のシーンなのですが。しょっぱなあの描写はきつい。

ネタバレ 自重しない感想

結末含めて、さらには他シリーズのネタバレも自重しない感想です。

ネタバレ気にする人は注意。

今回も良い意味で騙された。
まさか1章2章が丸ごと夢の世界とは・・・。

最初読んでいた時はどの世界が夢でどの世界が夢じゃないか・・・的な事を考えながら読んでいた訳ですが実際は全てまるごと夢の世界。

琴子が「どうせあんた死ぬから」と迫って来た時点ではこっちが夢の世界?
夢の世界でしか倒せないから眠らせてから倒そうとしている?
冒頭の殺人事件の犯人にばくうどが憑りついているような感じだけれども・・・「僕」は中学生。年齢的におかしい・・・となれば時系列にミスリードがある?

とか予想していたのですがそんな事は全くなく実際は全て片桐がばくうどにみせられていた夢の世界の話でした、というオチ。

どおりでジョジョネタが多いと思ったよ・・・。
「僕」は父親の持っていた漫画で知ったとか書いてましたが現役中学生が咄嗟にジョジョ5部ネタを言い出せるはずもない。2章ラストでも花京院の時計塔の話で盛り上がっているし・・・。
まあ、あの辺は野崎がつかまり真琴が自殺した時点でおかしいので夢だと判断できたのですが・・・ネタが古いのも納得。

・・・逆に3章あたりでまどまぎネタも「古いアニメ」で片付けられのはある意味恐ろしい。
そこまで古い作品でもなかった気がしましたが現役中学生からしたら古い作品ですよね。時の流れは怖すぎる。

で、1,2章でまるごと騙されたせいか3章以降の車いすのミスリードには全く気が付きませんでした。
彬良が瀕死の状態になった時に劉が病院に行くのを「そんな余裕はない」的に止められたのは違和感あったのですが・・・真相を知って納得そりゃ。連れて行く余裕はない。

読み返してみたらかなりの箇所に伏線張ってあったのですが・・・まあそれだけ1,2章の描写が印象の残ったという事で。

3章以降の感想はあとで後述するとしてラストの展開。
珍しく今回の登場人物が前向きな気持ちで終わって良かった良かったと言いたいところなのですが・・・代わりに真琴が夢の世界に。
・・・これは長編初の続編があるって解釈でいいのかな?

さすがにこの時系列以降の話で何事もなく復活するとは思えないのですが・・・復活劇を長編ではやらなさそう。
琴子が別件抱えていたはずなのでそれに絡めて復活するとか?

もしくはこの話を無視してこの話の前の時系列の話をやるとか。かなり気になります。

最悪死亡ENDもあり得るのがこのシリーズの怖いところですが・・・それだと比嘉姉妹シリーズではなく比嘉琴子シリーズになってしまうのでそれはないと信じたい。

何にせよ今回もかなり楽しめた一冊となりました。
長編は大がかりなミスリードがあってどれも面白いですね。
ホラー作品を読んでいるというよりミステリー小説を読んでいる気分。
その辺のバランスが面白くてこのシリーズは好きです。
・・・今回はホラー小説というよりスプラッター小説だった気もしますが。

他のシリーズもそうですが「ぼぎわんが来る」が実写化したので是非ともこれも実写化してほしいと思います。特に今回はスプラッター満載で映画化した時に映えそう。

・・・と思うのですが劉の車いす設定を変更しないと映像化無理ですね。
よく考えたら長編はどれも映像化が難しいミスリードやってますよね。
ずうのめは編集長の性別。
ししりばは入れ替わっている家族
など。

本という媒体を有効活用してのミスリードだと思うのですが逆に映像化は難しくなってしまっているという。色々と難しいものですね。
ぼぎわんは映画化、マンガ化していましたが・・・他のシリーズ作品は難しいですよね。

などらき、ぜんしゅ、さえづち、辺りならギリギリ可能?
中編なので尺がきつそうですが。


以下本文で色々気になるところを雑記

気になる台詞、シーンについて雑記

ばくうど

獏人・・・ではなく「ばくうどう」?
その「ばくうどう」も審雨堂を莫雨堂と書き損じたのが「ばくうど」として伝わり子守娘たちに唄われる存在に・・・
と結局どういった存在なのかよくわからない存在。

今までのシリーズの怪異もどういった存在かはっきりと示される事はあまりなく(そういった存在じゃないかな、ぐらいの扱い)今回もそういった存在ではあるのですが・・・今までのシリーズの怪異以上にわかり辛い存在であると思います。

とはいえそれは意図してわかり辛い存在にしたのではないでしょうか?
夢という存在は世界として捉えるのか。それとも高位の存在と繋がるチャンネルと捉えるのか・・・といった西洋・東洋の価値観の違いに加えて各個人でも差が大きすぎる存在。

その夢に巣くう怪異を定義づける事は不可能、というよりしたくなかったのではないでしょうか?
なので非常に定義がわかり辛く、かつよくわからない存在に。

劇中で判明している事は・・・

以前も今回と同様に暴れたらしいが憑りつかれた人間を夢の中で消す事で封印する事ができた?
封印状態だったが都市開発で目覚めた?
子供と瀕死の大人に極楽の夢を見せ、満足した魂を食う性質がある?
封印されていた場所の近くに病院・瀕死の人間が集まる場所があったので力を取り戻しつつあった?
大量殺人事件で完全に覚醒。以後子供を中心に夢を見せ食っていった?
夢に自傷用の包丁の持ち込みは許可するが覚醒用のミントタブレットは厳禁。煙草もダメ。

などなど?
なかなか変わった怪異ですね。
最後のタブレット持ち込み禁止はししりばのイヌ嫌いに通じる可愛さがある。

とはいえ今回は撃退すら出来てない上に真琴が抑え込んでいる状態なので・・・次回作以降でどうにかするのか気になります。

僕は圧倒されていた。言葉の意味はよく理解できなかったけれど、深いことを言っているのは分かる。

1~2章の「僕」が片桐父に感服している場面の台詞。
読み終われば単に自画自賛しているだけのシーンにみえますが果たしてそうなのだろうか?

あれだけ本文中にマンガネタをちりばめている片桐ですよ。
これはキン肉マンの台詞をオマージュした可能性が?

もちろん元ネタは「おお、言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい自信だ!」ですよね。
・・・違う?

片桐の年代的にありえなくはないと思うのですが・・・かなり気になります。
他は解り易いネタばかりだと思うのですが。

ラストの方で片桐っぽいやつが「さんをつけろよデコ助野郎」と言っているようにかなり色々ちりばめている事は確かだと思います。


ドゥビエスキ男爵夫人

看護師、堺が眠り続けている琴子に対して発した謎の言葉。
ちょっと調べてみましたが造語らしい?

この言葉を聞いた野崎が「悪趣味な引用癖」「とても気分が悪い」といった事。
その後、堺が「不謹慎すぎました」と言っている事から「ドゥビエスキ男爵」もしくはその夫人はかなり悪名高い人物である。
もしくは眠り続けて亡くなった人物ではないでしょうか?

この時、野崎は看護師にこの作業の目的は伝えていないはず。
堺は何故やっているか知らないけれども信頼できるクマちゃん先生の指示なら悪い事ではないだろうし、という態度でやっているので。
琴子が霊能力者である事、なぜ眠り続けているかを知らない可能性が高いはず。

なので軽い冗談の(本人にとって軽い)つもりで眠りに関する人物について言ってみたけど、よく知らない人に言うべき台詞ではない台詞でした・・・なるのかもしれないし伏線かもしれない。


他の人の感想ではこの人が能力者で次回作以降の伏線ではないか、というものがありましたが・・・どうなんでしょうね。結局何もしなかった訳ですし。
ただ今回の話はどう考えても次回作以降にも続くと思われるので・・・今回の登場人物で何かあるとすればこの人が一番怪しいというのは同意です。


その際ヒントになりそうな記述は・・・

「宇宙万有は無尽なり、知や涯てなして頭のええ人は・・・」と話すシーン。

調べてみましたがこれは

南方熊楠さんの「宇宙万有は無尽なり。ただし人すでに心あり。心ある以上は心の能うだけの楽しみを宇宙より取る。宇宙の幾分を化しておのれの心の楽しみとす。これを智と称することかと思う」と
荘子の「吾が生や涯てありて、知や涯てなし」をあわせた言葉?

ただこれ真逆の事を言っている(宇宙~の方は宇宙はデカすぎて全部わからないけど知る事は楽しいよ、知るや~は人の生涯は短いのに宇宙は際限ないからすべての事を知ろうとしても疲れるよ)っぽいんですよね。
とすればこの台詞は単に南方熊楠さんの台詞を省略していったみただけ?

まあこの人非常にわかり辛い引用をするので・・・
野崎に「悪趣味な引用癖」と言われたのは大量殺人者の片桐の手術中にユングの夢に出てきた「ご覧なさい、あれが人食いですよ」という台詞を「ご覧なさい、あれが人殺しですよ」と連呼していた事が原因。
この人嫌味っぽく冗談を言う場合は直接的に言わず知識のない一般市民にはわかり辛い言葉を引用してそれをさらに改変していう悪癖があるようなので・・・もはや何がなんだかさっぱりわからない。

これがあれか。「言葉の意味はよく理解できなかったけれど、深いことを言っているのは分かる」ってやつですね。
初級雑学の無い私のような一般市民に考察するのは無理という事でよろしいですね。


しかし直接的に冗談を言う人物ではない事は確か。
となると最初の「男爵夫人」も何か他の有名人の台詞を引用してわかり辛く(野崎が反応していた事からオカルト関連の可能性が高いですが)改変している可能性もありそう?


気になった点を追記予定

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