漫画 らーめん再遊記 10巻 感想

漫画 らーめん再遊記 10巻 感想です。
以前からコミックス購入してはいましたが感想を書くのはこれが初めてです。
9巻以前の感想はありません。

・感想

ラーメンハゲが全くラーメン作ってない・・・
なのに面白い。
毎回毎回芹沢さんの奇行というかアクションシーンが面白過ぎる。

今回は自転車でテンションバクアゲしているシーンはないのですが電動キックボードの事故に遭遇したにも関わらず「怪我のないことを祈ってるぞ」と言いながら愛車で走り去る芹沢さんが素敵すぎる。
自分が事故起こしたわけでもないのに芹沢さんが助けるわけもないので当然っちゃ当然の流れですがわざわざその後走り去るシーンを入れるのがシュール。

そしてなぜか天丼と言わんばかりに大学校舎内でキックボード事故に遭遇。
若人は国の宝~、いいこと言っている風で全く助けないあたりが実に芹沢さん。

話がそれまくったので戻しますが今回本当に全くラーメン作ってないんですよね。
過去に色々あった原田と遭遇。
そのせいでちょっと飲み過ぎてしまった芹沢さんの二日酔い解消・・・とかやっている間に勝手に進んでいくストーリー。「むにゃむにゃ」とか言っている場合ではない。
今回は原田の回想が多いせいかほぼ本編に登場していない芹沢さんですがそれでいいのか・・・と思わせてからのラストの「介錯してことぐらいか・・・」という今まで以上にシリアスなセリフで締め。
これは次回が気になる引きですね。

そもそも今回の話のメイン、原田は今まで以上に芹沢さんにとって因縁が深い相手なんですよね。
1巻~2巻の登場人物は過去にそれほど関係のなかった話なので除外。
3巻の宇崎はライバルに近い関係だったものの宇崎が没落していった事件は芹沢さんはあまり関係ない。
4巻~5巻の板倉は実力では大きく差があり、理不尽な土下座させただけの因縁。
6巻の永友はかつては尊敬する先輩だったが今はちょっと間を置きたい関係。
7~8巻の小宮山はデカい事を言っていたにも関わらずラーメンのなんたるかを理解しておらず勝手に自滅していっただけの存在。
9巻はグルタ君のいろいろな意味での無双回。

それに対して今回の原田は過去に芹沢さんが完全に認めていたほどの存在。
宇崎以上のライバル的存在といっていいはず。
そして宇崎と違って原田が引退したのは芹沢さんの濃口らあめんを食べたことが大きな要因となっていることは間違いないんですよね。

宇崎も原田と一緒で自分の理想を突き詰めた結果、引退に追い込まれたのですがあちらは勝手に自滅しただけ。
原田は実力的にも関係的にもこれ以上ないぐらい芹沢さんとのライバル関係と言ってよいはずです。

そしてさらに原田が宇崎と違うのはこれからラーメン屋としてやっていこう、という気概があること。
宇崎は芹沢さんとの自販機ラーメン対決で再起しましたがそれまでは完全にラーメン屋としてやっていく気はなかったですからね。
大して原田はこれからラーメン屋をやろう、という気概はあるものの・・・何かしら思うところがある模様。そしてそれに対して芹沢さんは「介錯」という事を言いだしているので・・・どういった展開を迎えるかは別として結末は宇崎とは全く逆になりそうな予感がします。

ただし不幸な結末ではなく過去を断ち切って新しい世界に行かせてやろう、という芹沢さんなりの配慮にも見えますが。
電動キックボードで事故った若者には一切配慮しない芹沢さんもかつての因縁の相手には思うところがあるようですね。さすがラーメンは「情熱そのもの」と言い切るラーメン馬鹿。
ラーメンに対する思いだけは別物ですね。

というわけでらーめん再遊記にも関わらずほぼラーメンを作っていないのに面白いのは・・・やっぱりこの辺の人間ドラマがきっちり描かれているからだと思います。
あとは自転車乗って「ハイヨー!」する芹沢さんとかが面白過ぎる。

次巻。
ラーメン業界から遠ざかっていた原田に対してラーメン馬鹿で居続け、進化したラーメンハゲはどう原田を介錯するのか。
そして自転車アクションシーンはどういった進化を遂げていくのか。
楽しみになる10巻の感想でした。


上記はとりあえず1回読んだ感想。
以下、2回目読んだ感想。

というか適当な考察。
この後の展開は本誌ではとっくに終わっている話だとは思うのですが・・・それはさておき。
とりあえず適当に考察してみようと思います。

芹沢さんの「介錯」について。
その「介錯」について書く前に原田のやりたいこと、思いを整理。

原田のやりたい事は今も昔もラーメンの可能性の追求。
それ自体は本心ではあると思うんですよね。
ただ同時にラーメンの可能性も見えてきてしまっているんじゃないかと。

90年代のニューウェーブ系の全盛期。
原田はニューウェーブ系繁盛店の同業者にも一目置かれるほどの天才っぷりを発揮。
有栖さんによればラーメンの定義を再考させるぐらいのラーメンを最後に作っていた、と話しているようにその才能は間違いなかったはず。

しかし店自体は2年ほどの期間で閉店。
他のニューウェーブ店も多くは閉店しながらもいくつかの店は営業を続けているにも関わらずそのトップだった原田の店は閉店せざるを得なかった。
テレビなどのマスコミを徹底的に排除していた、という理由もあるとは思いますがそれ以上に自身の理想を追求しすぎて一般受けしなかった、という理由だと思われます。

一般受けしなかった理由の一つがボリューム不足。食事満足度不足。
ニューウェーブ系はボリューミーなつけ麺などに押され衰退していったとの事。
それでもニューウェーブ系の作り出したラーメンはハイスペックラーメンの元となり、ラーメンはニューウェーブという過渡期を経て、進化してきたようです。

理想が先走り過ぎた原田のラーメンも受け入れられる現状が整ってきた。
だからこそ原田は店を再開しようとしてるのではないでしょうか?
ただし原田が燻っている間に原田と同等のラーメンを作れる店が出てきてしまった。
繁盛店でも原田が作っていたラーメンぐらいは作れるようになっている。
さらに言えばハイスペックラーメンの極み「普通のラーメン」やニューウェーブ系の極み「なでしこ」の365日日替わりラーメンなど原田の理想としていたラーメンの上位互換に近い存在も出てきてしまっているんですよね。

そしてその理想としてきた個性的なラーメンもボリューミーなネオレトロなラーメンに押されつつある。
「普通のラーメン」や「なでしこ」のようなトップクラスのラーメンなら生き残れるかもしれない。ただ現状の個性的なだけのラーメンでは厳しいかもしれない。

今の自分のラーメンがどれほど通用するのか。固定的な繁盛店と同様のラーメンが作れる程度では90年代と同様に失敗してしまうんじゃないか・・・みたいな感じで迷いに迷いまくっているんじゃないですかね?
でも自分にとってのラーメンは好きというよりもはや「業」。
諦めて人生を終えられるほど軽い存在ではなくなってしまっているんじゃないかと思われます。

で、パートナーの女性はそんな彼の事を心配し、彼の挑戦がうまくいくように芹沢さんや有栖さんに依頼。それを聞いた芹沢さんは「介錯」することを決意した、という話。だと思う。多分。

前置きが非常に長くなりましたが芹沢さんは彼の「業」を介錯しようとしているんじゃないでしょうかね?
昔のままの、可能性を追求し続けるだけの原田ではしばらくはうまくやってもいつかダメになってしまう時が来る。
芹沢さんはかつて理想のラーメンを作るために現実的にならざるを得なかったですが・・・原田は恐らくどんな状況になっても自身の理想を追い続けると思われます。
つまりいつかは失敗する可能性が高いはず。
じゃあその前に俺自身がやつの自殺、切腹にも近い思い、理想に殉じる思いを断ち切る介錯をしてやろう、という考えをしているような・・・そんな気がします。

長くなりましたが・・・次巻ではいよいよ芹沢さんがかつてのライバルを圧倒するようなラーメンを・どや顔で作ってくれるはず。最近の芹沢さんってインスタントラーメンばかり作ってたし・・・。
ただしどういったラーメン作るのかはさっぱり予想がつかない。
ニューウェーブ系特集の話を搦めて、さらにはかつての原田が作った最後のラーメンをからめてくるとは思うのですがその辺は次巻のお楽しみとしておきます。

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