小説 明智恭介の奔走 感想

小説 明智恭介の奔走 ネタバレありの感想です。
ネタバレ注意。
ただし各短編の犯人などのネタバレはしていません。
屍人荘の殺人シリーズのちょっとしたネタバレありの感想となっています。

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最初でも最後でもない事件

以前電子書籍限定で配信されていた

〈屍人荘の殺人〉エピソード0 明智恭介 最初でも最後でもない事件

と同等の内容?

シリーズで恒例となっている物語導入で語られるちょっとしたミステリーをボリュームアップさせたような内容。
短編集の中でも一番ミステリー作品っぽい内容だと思えました。
といっても私個人は普段ミステリー作品をほぼ読まないのでどういった作品がミステリーか、とか言える人間ではないのですが・・・とにかく一番ミステリーしているな、という印象の作品。

とある日常の謎について

ミステリーというかちょっとした人情話みたいな印象。
二つの事件というか謎が混ざっているようであまり関係なかったのが原因でしょうか?
二つの謎が完全に関係ないわけではないけれどもちょっと方向性が違い過ぎていて実は本当の謎はこれでした、と種明かしをされてもああ、そうだったのね、という印象しか残らなかった。

ただしミステリーではなく人情話として読むと良い読後感もあり良い短編。
他の短編はミステリー好きな作者が〈屍人荘の殺人〉シリーズでは描きづらいミステリーをふんだんに盛り込んだので一つぐらいはミステリー要素薄めの作品、そして明智恭介を描きたかったんじゃないか?と思える短編でした。

泥酔肌着引き裂き事件

個人的には一番面白かった短編。
ある意味明智恭介の真骨頂と言えなくもない無駄に洗練された無駄の無い無駄な事件。
大学生が関わる事件なんてこんなもんでいいんだよ・・・と思わず思ってしまう作品。

葉村が今後関わる事件があまりに超常的な事件ばかりなので余計にそう思ってしまう事件でした。
長編のミステリーでこの展開、そしてこのオチだったら作品ぶん投げそうですが短編集なら満足できる良い短編でした。

宗教学試験問題漏洩事件

屍人荘の殺人の導入部で語られていた”宗教学試験問題漏洩事件(仮称)”の事件。
個人的にはこれはゴチャゴチャしすぎてわかり辛かった。
作中でも語られている「なにを推理のとっかかりにしていいのかさっぱり分からず」といった印象を受ける作品。

ただし私個人は普段ミステリー作品をさっぱり読まないので、推理のとっかかりがあろうがなかろうが犯人を当てた事はほぼないのですが。
少なくとも屍人荘の殺人シリーズで犯人を当てた事は一度もない。

それはともかくとしてかなりゴチャゴチャして状況がわかり辛い短編だったなあとは思ってしまいました。
まあ明智さんが積極的に場を混乱させ続けていたのも原因だとは思うのですが。
探偵役が自信満々に「安心しろ。きっと誰も傷つくことはない」とか言い出しながら全く的外れの推理を披露するとは思わないよ・・・。一人傷つきまくってるよ・・・。

ただその辺を言い出すと屍人荘の殺人では葉村君が・・・ネタバレになりそうなので止めときます。
あのミスリードには完全に騙されました。

手紙ばら撒きハイツ事件

これは・・・漏洩事件以上にごちゃごちゃしてさっぱりわからない。
解決パートで解説されても誰が何をどうしたかったのがスっと入ってこない。
他の短編やシリーズの長編は解説されれば誰が何をしたかったのかは大体理解できたのですがこれは解説されてもよくわからなかった・・・。
ページ数のわりに登場人物がやたら多いのが原因かと思ってしまう。普段からミステリー作品読んでいる方には問題ない作品なのかもしれないですが個人的にはごちゃごちゃしすぎてよくわからなかった、という感想になってしまいました。

それはさておき初々しい明智が見られるのは新鮮。
・・・まあ、最初といっても過言ではない事件と「最初でも最後でもない」事件の時と大差はなかったような気もしますがその辺も明智らしいと言えばらしい気がする。
しかし明智も比留子さんよりマシとは言えかなりの受難体質ですよね。しかも主人公補正があまりない主人公。今後も短編を重ねるごとにやたら傷を負っていきそうな気がする。

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