小説 怪談小説という名の小説怪談 感想

小説 怪談小説という名の小説怪談
ネタバレありの感想です。

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高速怪談

堀さんが一番怖い。堀さんは「怖ガラセ屋サン」ですか・・・
とはいえ(恐らく)堀さん本人である上に、自分の身を危険に晒している以上、堀さんは怖ガラセ屋サンとは違うベクトルのヤバさを持っている事は確か。
堀さんを「変わった子ぉ」と評した宇都宮さんは人を見る目が無いか、もしくは宇都宮さんもヤバい人。ドタキャンしてよかったですね。

ただ堀さんの怪談というか行為が怖すぎたのでオチがいまいちに感じてしまった。
実際に心霊現象が関わっているのは石黒の描いた女性の絵だけだと思うのですが堀さんの話に比べたらインパクトに欠けるというか・・・。
いや、実際に遭遇したらラストの女性の方が怖いですよ?多分。
何気なく描かれた女性の絵が実はこれから起きる事件の前触れだった・・・というのはかなり怖い。
ただ読者的にインパクトがあるのは堀さんの話の方ではないでしょうか?
同行者の誰も素性を知らない人物が突然「僕が堀泰三かどうか知り得ない。全くの別人だったとしても分からないわけです」とか言い出して車を猛スピードで走らせ始めたら。
もう堀さんは「怖ガラセ屋サン」としてやっていった方がいいと思う。

あとは完全に余談ですが汀さん。
「頭の大きな毛のないコウモリ」の「貍 または怪談という名の作り話」を先に読んでいたせいか、こちらも某国民的アニメを見る時にこの話を思い出させてやるぜ!みたいな意図の怪談かと勘違いしてしまったのですが全くそんな事はなかった。

笛を吹く家

これは怖い・・・
37歳小太り中年を後ろに乗せ、意気揚々と自転車を漕いでいく60歳オーバーの主婦とか・・・。
いや、意気揚々としていたのかは不明ですが小太り中年(小柄だが肥満、らしいので小太りかどうかは不明)と二ケツできる60歳越えの女性は剛の者すぎやしないだろうか。
夫のように自転車の後ろにのせて自転車を押した方が・・・いや、どっちもきつくないだろうか。なにせ小太り。肥満とされてている事から少なくとも60㎏オーバー。70㎏オーバーの可能性が高いはず。
それを乗せて二ケツも自転車を押すのも難易度が高すぎやしないだろうか。
どちらにせよ37歳小太り中年を運ぶ機器として自転車は適していないと思う。

となると・・・二人とも相当なフィジカル強者の可能性が高いですね。
そんなフィジカル強者2名と自転車の後ろに乗った37歳小太り中年が家の周辺でうろついていたら通報されるってもんですよ。何を企んでいるかわからない。近隣住民は間違っていない。

・・・そろそろ修一さんをディスるのは止めておきます。自分にかえってきそうだし。
ともかくこの話で一番怖いのは3歳になる息子との散歩中にこの話を思いつく作者ではなかろうか・・・。
どんな発想をしたら37歳無職とずっと散歩している話を思いつくのだろうか。
劇中で語られていた30年前にあった凄惨な事故が霞んでしまうぐらい凄惨な日常。
夫が「きっと心身ともに限界に近いのだろう」とか言っていましたがこの話の設定は限界を超え過ぎだと思う。
ハーメルンの笛吹も笛を投げ捨てる設定だと思います。

余談。
夫の「私は同じ世代の男性よりは育児に取り組んだつもりだが」のセリフ。
「ぼぎわんが、来る」の田原秀樹みたいなやつかと思ったのですがそうでもなかった。
文字通り「育児に取り組んだ」ですね。成功したかどうかはさておき。

もう一つ余談。
子供を亡くした「奥さんが自殺しちゃったの」で映画やゲームのスイートホームを思い出してしまったのですが全くそんなことはなかった。
むしろ37歳中年を引き寄せてくれる可能性があるだけ良い存在なのでは・・・。まあ劇中で語られている事が事実(失踪事件が少なくとも3件)であれば違うのですが。
噂がが広まり過ぎて近隣住人は近寄らなくなった結果、37歳中年にターゲットを変更した可能性があるのだろうか。それはそれでちょっと怖い。

苦々陀の仮面

これは石仮面に立ち向かった若者たちの物語ではないだろうか・・・
撮影中に「リーダー格の運転する車に撥ね飛ばされ、木に叩き付けられる」ているんですよ。
そして問題なく撮影続行しているとか。明らかにいじめとか暴行のレベルではない。
吸血鬼に立ち向かった人間賛歌の物語・・・ではないですね。少なくとも人間賛歌ではない。

そもそもどこからが本当でどこまでが嘘かわからない話。
誰かが嘘をついているのかもしれないし、全て事実なのかもしれない。
ワンカットで車に撥ね飛ばされ、木に叩き付けられたのが苦々陀の役者さん本人だとしたらフィジカル強すぎでしょう。もう既に「おれは人間をやめるぞ!」していてもおかしくはない。

という冗談はさておき。
この作者さんはジョジョネタが結構な頻度で登場するので
「苦々陀の仮面がカタカタと動き出し、青年の顔に被さった。赤黒い触手が仮面の端から伸び、頭部を覆う」で石仮面ネタかと思ってしまったんですよね。
そんな事はなかった・・・のかもしれないし、オマージュなのかもしれない。
ともかく暴行を受けた上でラストシーンで車に撥ね飛ばされた役者さんが人間を超えたフィジカルをしていたのは間違いないと思う。既に仮面の影響を受けていたとは思いますが。

気になるのがラストでちょっと語られた木の神ククノチ。
ちょっと調べてみたらククノチは「久久能智神」別名「句句廼馳」。
ククは木々を表す模様。
陀は色々と意味はあるようですが恐らく仏陀や”ぱ☆GO!陀”などで使用されている陀。
この陀は輪廻転生の中で、人間の身体が朽ち果てた後に残る骨や灰とのこと。

苦々陀は木々と人間の遺体が組み合わさって生まれた存在という事?
あまりも酷い扱いをされていた青年に同情して力を貸したのか。
それともあまり撮影が五月蠅かったのでちょっと苦々陀の仮面の能力を盛ってやってさっさと撮影を終わらせた。これで一安心かと思いきや映画が評価され、このままでは聖地巡礼されてしまう・・・
という事で遺体を使って関係者を〆に行った可能性が?

ただ映画の苦々陀の仮面。
単にあらすじをあげると「高速怪談」で語られていた星の数ほどある「マスク被った殺人鬼が人殺し しまくる映画」なんですよね。
一番有名だと思われる『13日の金曜日』と似たような構成と言えるのかもしれない。
あれも事件の発端は復讐のはず。

そもそもククノチについての書き込みもネットでの「関係あるんちゃう?」ぐらいのものなのであまり深く考えても答えは出ないのかもしれない。
とはいえわざわざラストで言及してあるので何かしら関係性があるとは思うのですが・・・実際はどうなんでしょうかね?



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