映画 ベートーヴェン捏造
ネタバレありの感想です。
ネタバレ注意。
・感想
感想なんて書きませんよ。利が無ければ。
ドラマのホットスポットやブラッシュアップライフが好きだったので、この映画を観に行ったのですが予想していた・・・というより期待していたのとちょっと違う作風。
ベートヴェンの事を散々小汚い、無精ひげを生やした、手がヌルッとした、などのシーンや延々と自慢話されてシンドラーが立ち眩みをしそうになったり・・・といったバカリズム脚本っぽいシーンはあれども本筋は非常にまじめ・・・と言っても捏造話なので真面目と言ってよいのか不明だが映画として盛り上がる場面はきっちりと描いてあって全体的にまじめな作風に思えてしまった。
ホットスポットやブラッシュアップライフのラストの一番盛り上がりそうなシーンはあっさり解決して、その後の日常会話がむしろメインじゃね?と思わせる作品になっているかと思いきや・・・ラストのシンドラーとセイヤーのシーン、そして捏造ベートヴェンとシンドラーのシーンは普通に盛り上がるじゃないですか・・・違う意味でちょっと騙された気分。
ただ・・・よくよく考えると一番描きたかったのは、それ以降の先生と生徒のシーンではないだろうか?
結局のところセイヤーがシンドラーの捏造を見抜けたかどうかは不明。見抜いていたかもしれないし、そうでもないかも・・・といったような感じで終わってしまっている。
歴史的な事実としてはセイヤーはシンドラーの捏造を発表できなかった、という事だけ。
実際は本当に見抜けなかったのかもしれないし、見抜いた上で誰にも利が無いから発表しなかっただけなのかもしれない。
そもそもの話、伝記なんて誰かに利が無ければ発表されないものなんですよね。
ベートヴェンという偉人だからこそ関係者による伝記が複数発表され、それぞれ伝記を書いた人の利が詰まっているはず。
シンドラーは偉大なベートヴェンを、実際は小汚い、無精ひげを生やした、小汚いおっさんだったベートヴェンを事実で汚されたくなかったからこそ伝記を発表・・・というより捏造した。
ホルスたち他の執筆者にもそれなりの利があったはず。
実際のところはホルスたちの伝記の方が正しかった訳ですが、それでも後世に残ったのはシンドラー著の方。
シンドラー著の方は英語でも書かれた。手帳を捏造した。などの要因もあったのかもしれないですが・・・そういった事実よりも人々はベートーヴェンの偉大なる人生を読みたかった、という事もあるのかもしれない。
偉大なる作曲家には偉大なる経歴が。そして言葉があった。はず。
運命の扉のくだりも実際にはベートーヴェンは言わなかったのかもしれない。しかし言わなかった事を否定できない。
そして人々は偉大なる作曲家であればそういった事を言っても不思議ではない、むしろ言っているだろう、と思ってしまった。のかもしれない。
そもそもホルス著で甥の自殺の原因はベートヴェンによる過干渉だ、みたいな描かれ方をしていましたが、これが事実かどうかは・・・甥に聞かなければわからないですよね。
シンドラーはホルスが甥の話を親身に聞いてあげなかったから、とも思っていたようですし。
ベートヴェンが甥を自殺未遂に追いやった、という事実より運命の扉のようなエピソードを読みたかった。だからシンドラー著の方が後世に残った、とも考えられないでしょうか?
そんなわけで実際には何が事実か、という事は関係者以外はどうでもいいのかもしれない。
コーヒー一杯で延々とシンドラーの悪行を聞かされた生徒は他の人には言わないですよ、利が無いですから、という締めで映画は終わった訳ですが(セリフはうろ覚え)・・・利があれば伝えるとも取れる締めですよね。
そもそもシンドラーの捏造を生徒に延々と話し続ける利が先生にはないわけで・・・それでも話を続けたのはこの話を誰かに話したかったから。
人間自分にとって話したい事があれば事実であろうがなかろうが伝えるものだし、その際に大なり小なり誇張をしたりするもの。
事実なんてどうでもいいのかもしれないですね。自分の気持ちの前では。
そして人間にとっては自分の気持ちが一番の利なのかもしれない。
といった感じで延々とどうでもよい私個人の感想を書き殴ってきたわけですが・・・それはつまりこの映画が期待とは違っていたけれども、それでも面白かった、という気持ちを伝えたかった、といった形で締めたいと思います。

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